221番道路

『しんかいのウロコ』を持たせて通信交換

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 僕は、何かを新しく好きになることが苦手だ。

 その理由を考えてみると、好きなものを増やすことに抵抗があるのではなく、いま現在好きなもの以外の何かに出逢おうと足を踏み出すことに抵抗があるのだと思う。Twitterをやっていると、タイムラインには他グループの情報もしばしば流れてくるし、そこに対して好意的な反応を寄せているオタクが目に入るものである。しかしながら、じゃあMVくらいは見てみようかとか、どんなメンバーがいるのかくらいは知っておこうかとか、そういったエネルギーの割き方がなかなかに難しい。だから(100%悪いことだとは思わないが)いま好きなものだけを見続けて、いつまで経っても「K-POP好き」になれないのだ。

 この性分は厄介なもので、一度スルーを決めてしまうと、そのとき触りに行かなかったことによる「知らなさ」が蓄積していき、次に出会ったときにはより一層手が出しにくくなるという悪循環が待ち受けている。おそらく、この最悪なシステムには自分の感性に対するオタク的プライドが絡まっていて、客観的に分析するのであれば「目と鼻の先にあった好きになりうる存在に気がつかなかった」という事実に気がつきたくない、という気持ちが引き起こしている問題であるように思える。

 

 ただ最近、この問題が強制的に解決されつつある。というのも、国内外を問わないMVがひたすら流れ続けるという、強化版新大久保みたいな空間で日々の労働が行われており、自動的に好きなもの以外にも感性が晒されているからだ。この間も存在すら知らなかった好きな曲と遭遇できたし、逆に、聴き馴染みのないK-POPの間に登場した『The Feels』を試聴して、自分にとってのTWICEの素晴らしさを再確認して安堵することもできている。

 よく考えれば、いまTWICEやNiziUを好きでいられるのも、有難いことに関連コンテンツがTwitterのタイムラインに流れてきたことがきっかけだ。上述した通り、ずっと好きなものだけに浸っていたい身としては積極的に認めたくはないのだが、何かを新たに好きになるためにも、いま好きなものを好きであると確信し直すためにも、どうやらその引き金となる新たな情報のインプットが必要なのだろう。

 

 少し怖いけれど、"You have stolen my heart, oh yeah" と言える存在を、新たに知る日は来るのだろうか。